だるまとは何か?だるまに込められた意味合いや精神性を解説
「だるまってなんで縁起がいいと言われてるの?」「そもそもだるまって何!?」
だるま市などで最近このような声をよく耳にします。
だるまは縁起が良いものとわかっていても、その由縁は詳しく知らないという方が多いのではないでしょうか。
そこで、だるまに込められた意味合いや精神性について、だるま屋の私が改めてこの記事で解説していきたいと思います。
だるまってそもそも何?
だるまの定義
だるまには様々な種類・形があるので定義づけることは難しいのですが、
だるまとは日本の伝統的な縁起物で、祈願や心を引き締めるためのシンボルだと考えています。
だるまは単なる置物にとどまらず、手を合わせる対象として人々の心を高めてくれる存在になります。
ではなぜ、だるまはご利益のある縁起物として今日まで親しまれているのか紐解いていきます。
だるまの起源・由来
だるまの起源は達磨大師
だるまは達磨大師が赤い衣(緋色の法衣)をまとい坐禅をしている姿を模したものです。
達磨大師は禅宗の開祖であり、6世紀頃にインドや中国を中心に布教をしていた非常に位の高い仏教僧です。
達磨大師の教え
達磨大師の宗旨(教え)には壁観という特徴があり、
「壁のように動ぜぬ境地で真理を観ずる禅」が坐禅の定義として継承されています。
壁に向かい9年間坐禅を続け、悟りを開いたという達磨大師の伝説(面壁九年)は言うまでもありません。
このことから、達磨大師は「不撓不屈」の象徴として人々に親しまれるようになりました。
※不撓不屈(ふとうふくつ):どんな困難や苦労にも挫けず立ち向かうこと
だるまの姿カタチ
だるまの基本的な形
だるまは基本的に達磨大師の面壁九年の坐禅姿を模しているので、多くのだるまは赤く丸い形をしています。
一般的にだるまのイメージがつきやすい高崎だるまを使って、だるまの姿形を説明していきます。
・顔:達磨大師の顔を表し、睨みがの利いた目に立派な眉と髭
・形:七転び八起きの丸。家庭や社会の円満を表しています
・底:へったと言い、練った土ででできた重り
・色:緋色の法衣を表した赤 (最近では赤以外のカラフルなだるまも人気です)
赤くて丸いだるまだけではない
だるまと言うと高崎だるまのような丸い形のだるまをイメージするかもしれませんが、様々な形・種類のだるまがあります。
特に昔は各地域で生産され、その見た目やモデル、素材も様々でした。
例えば、青色の松川だるま、皇室の女子誕生にちなむ姫だるま、木彫りで作られた立ち姿のだるま、などなど。
松川だるま
姫だるま
だるまの人形としてのルーツ・変遷
次は、だるまの多くはなぜ赤く丸い形状になったのか、ルーツを辿っていきましょう。
だるまの最初の原型、酒胡子
だるまの最初の原型は唐の時代(7~10世紀)に中国で生まれた、酒胡子(しゅこし)という人形でした。
酒胡子は木製の駒のような形の玩具です。
酒の席で酒胡子を回して、倒れた席の人が飲むという遊びで使われていました。
不老長寿の縁起物、不倒翁
やがて、酒胡子は明の時代(14~17世紀)に中国で不倒翁(ふとうおう)という人形に姿を変えていきます。
不倒翁は紙の普及とともに生まれ、紙と粘土のおもりでできた張子の人形です。
倒しても酔っ払った翁のような動きで起き上がり、「不老長寿」の縁起物として親しまれていました。
※不老長寿:いつまでも老いることなく、健康で長生きすること
七転び八起きの縁起物、起き上がり小法師
その後、室町時代(14~16世紀)の日明貿易により不倒翁が日本に輸入されると、
起き上がり小法師として姿を変えて日本各地で登場するようになります。
起き上がり小法師は紙と粘土のおもりでできた張子の人形で、今でも福島県会津を代表として親しまれている工芸品です。
何度倒しても起き上がることから「七転び八起き」の縁起物として親しまれています。
※七転び八起き:何度転んでも(失敗しても)、奮起して起き上がること
だるま誕生へ
達磨大師の「不撓不屈」の精神と起き上がり小法師の「七転び八起き」の精神が相まってか、
江戸時代中期(1700年頃)になると江戸を中心に赤く丸い張子の「だるま」が誕生します。
また、当時は疱瘡という伝染病が流行り、不治の病として恐れられていました。
疱瘡は赤い色を嫌うという言い伝えから、赤いだるまは「疫病退散」のご利益もあると重宝されていました。
だるまに込められた意味合いやパワー
縁起物として
達磨大師の「不撓不屈」や起き上がりの「七転び八起き」などの要素に加えて、
各地域で縁起のいい絵柄が描かれるようになり、だるまはさらにパワーを増しました。
例えば、高崎だるまは「眉は鶴、髭は亀」、相州だるまでは「口は富士」、白河だるまでは「耳鬢は松と梅、顎髭は竹」、多摩だるまでは「目周りに金箔」、など。
だるまは各地域で特色が現れ、縁起物としての意味合いが一層強くもたれるようになりました。
願掛けとして
だるまには願いを叶える「願掛け」としての意味合いがあります。
・願い事を込めてだるまの目を入れる開眼
・だるまのお腹や両肩への文字入れ(腹文字・肩文字など)
・睨みの利いただるまに見守ってもらおうと飾る行為
これらの気持ちを込めた作法によって、だるまに願いを叶える心を刻みます。
他にもあるだるまのパワー
だるまはもちろん置物としても部屋を彩ってくれます。
その見た目は時代を選ばず、色褪せることありません。
力強いだるまの顔は気を引き締め、パワーをもたらしてくれるでしょう。
まとめ
だるまとは日本の伝統的な縁起物で、祈願や心を引き締めるためのシンボルです。
もともと、達磨大師が赤い衣(緋色の法衣)をまとい坐禅をしている姿を模したもので、
達磨大師の「不撓不屈」や起き上がりの「七転び八起き」などの精神性に加え、
縁起のいい絵柄、願掛けの要素が合わさり、今日まで縁起物として親しまれています。